ビルメン業界の2015の動向と2016以降の課題 【掃除のつぼ まとめ】
掃除のつぼ会員の皆さま
今年も年の瀬がせまってまいりました。私たちのお仕事柄、大変お忙しくなさっていることと存じます。どうかお怪我や事故のないようにしてくださいね。
さて、2015年ももう終わり。皆さまにとってどんな1年でしたか?
この1年間で、私たちを取り巻く環境がどう変化し、どうなっていこうとしているのか、
掃除のつぼなりに考えてみました。
「円安」と「最低賃金上昇」の2つの面から見ていきたいと思います。
①円安
円安は輸出企業の業績がよくなります。自動車産業、エレクトロニクス産業など。
逆に輸入企業の業績は悪くなります。エネルギー産業、食品、生活用品など。
輸出企業は史上最高益を出すなど空前の業績をあげていますが、全体で見るとほんの一部の企業です。
私たちの身の廻りには、輸入原材料の値上がり、輸入の仕入れ商品の値上がりを売価に転嫁できず苦しい経営を強いられている企業の方が圧倒的に多いと思われます。
「世間では景気がいいとか言うけど、そんなこと感じないな~」という声は多いです。
また、円安は海外観光客が安価で来日できるようになりました。
アジアからの旅行者の大幅増で、ホテル・旅館業界、医薬品など一部の小売業界でも空前の業績を上げておられます。(中国旅行者はすでにピークを過ぎ減少フェードに入ってしまいましたが・・・)
一部の業界だけ好景気、多くの業界が相変わらず不景気、というのが日本経済の実態ではないかと思います。
今年は、ホテル清掃を請けておられる会社様からは、値上げのお願いを受け入れて頂いた!と喜びの声が多く聞こえてきました。20~30%の料金改定も多く聞きました。ホテル様も安かろう悪かろうではなく、業績の良い時に清掃品質をあげて、更なるリピーター獲得を目指したいという考えのようです。正しい経営判断をされていらっしゃると思います。客室清掃の仕事は、単価競争が特に行き過ぎていました。ホテル清掃分野で料金改定に動いた会社様が多くあったのはひとつの流れを生みました。私たちの業界全体にとって大変良いことだったと思います。
勇気ある行動に賞賛を送りたいと思います。
私たちのお客様で多い業界のひとつに、テナントビルと商業施設があります。
この2つは、好景気、不景気のどちらでしょうか?
テナントビル様の収益は賃料収益です。賃料の値上げができれば収益が上昇し、メンテナンスにかける予算も増額することができます。
しかし、テナント様への賃料の値上げは容易ではありません。
それどころか、テナント様から「もう少し賃料を下げてもらえないか」と相談をされている場合の方が多いと聞きます。
商業施設様はどうでしょう?
商業施設様は自社区域での販売益+テナント賃料が収益です。
国内消費の低迷と、賃料単価を引き上げられないダブルパンチ。
イトーヨーカドーでは、5年間で40店舗の閉鎖計画を発表するなど、苦しい経営環境が続いています。
テナントビルや商業施設のお仕事では、値上げの話しなんてもってのほか、今も、値下げの依頼があったり、金額見直しの競争入札を開催したり、というようなことを耳にします。
円安からもう1点 私たちの業界では大変深刻な問題があります。
人不足です。
一部の好景気な企業が正社員・パートあらゆる採用を増やしていますので、私たちの業界では人の採用難が深刻化しています。 正社員採用では、少子高齢化も大きな要因です。
②最低賃金の上昇
日本は、国内景気を上げるために最低賃金の上昇を進めています。
「給料が増えれば、消費に使うだろう」→「その消費の結果 企業も売上・利益が上がる」
おおざっぱに言うとこのような理論で景気を上げようと、政府が進めているひとつです。
また、実は、驚くことに、日本の最低賃金の水準は先進国の中で最下位なんです。
最低限の生活を社会保障制度で支援する生活保護と、法定労働時間を目一杯働いて得る収入との逆転減少が起こっています。この秋の最賃改訂で逆転現象は解消したと報じられてはいますが、週40時間労働で単純算出した場合には解消されましたが、夏期休暇、年末年始などの連休があれば、出勤日数が減るので生活保護費を下回る実態はまだまだ残っています。
よって最低賃金はまだまだどんどん上がっていく方向で間違いないでしょう。
まとめ
一部の好景気なお客様をもつビルメン様は、その恩恵を受け、値上げ改定によりすでに業績の安定化を進めています。
もちろんお客様のご期待に沿える品質向上に予算を投下したり、最賃上昇による人件費投下をしなければなりませんが、それでも一定の利益幅を確保することが値上げによって実現したでしょう。
向こう数年間の安心感は得ているのではないでしょうか。
しかし、お客様が依然として不景気産業の場合には、値下げを求められ、もっと安く、もっと安くならないか、と乾いた雑巾を絞るように、更なる値下げに直面しているのではないでしょうか。
業績の低迷するお客様のご要望にも、できる限りお応えするのが私たちの仕事ですが、今や 私たちの業界がすでに限界をむかえています。
今は値上げの時代です。
今すでに限界ですし、今上げておかないと、景気が更に冷え込むと言われている2020年オリンピックイヤー後の時代には耐えられません。
仕事の絶対量が激減し、かつ、安い仕事しか業界に残っていないでしょう。
その頃には多くのお客様の業界が、今よりもっと冷え込んでいるところが多いはずです。
今です。業界をリードする大手ビルメン様、ビル管理会社様は、ビルメン費用の値上げ交渉に動いてください。
下請け会社はそろそろ本当に限界です。
大手様のもとには、この秋の最賃改定を受けて、下請け会社から値上げお願いがかなり来ているのではありませんか?
既存案件の入札をしたり、別の下請け先を今の予算で探すことは、時代を考えるとナンセンスです。
是非、大手さんが中心となって、お客様に価格交渉をし、業界全体の単価を上昇させてもらいたいと思います。
動いた大手さんには下請け会社はついていけるし、動かなかった大手さんには、もう下請け会社はついていけないのではないかと危惧しています。
是非、大手さんには動いてもらわないといけません。
私は、警鐘を鳴らしたいと思います。
下請け会社は、大手さんのその活動に見合うように、品質面・サービス面において磨きをかけましょう。いい加減な仕事をしていたら、大手さんがお客様に価格交渉をできるはずがありません。これは必須条件です。
下請け会社は、現場品質向上に全力を尽くさなければいけません。
最後にひとつ、私たちのお客様の業界は苦しい経営の場合も多いです。単価の引き揚げは無理な場合は多々あります。しかし、今の総額予算内での仕様変更なら、お客様の理解を得られる場合もあります。
品質面は若干落ちてしまいますが、日常清掃時間を一部カットさせてもらったり、定期清掃の回数を割愛させてもらったりと、実質の単価アップを実現する方法もあります。
それでも難しい場合には、まだ方法があります。
幸いにも、清掃資機材メーカー各社さんは、すばらしいものづくりをされています。
労働力不足、予算削減に対応できる新メンテナンスシステムをどんどん開発してくれています。
時代の先を読んだものづくりをしてくれています。
しかし、現在の仕様書を改定しないと導入できないシステムが多いです。
人数契約→ロボット 美観長期化床保護剤導入→定期清掃回数削減 回数契約→美観契約など
従来の常識にとらわれない柔軟な発想で、すばらしい「モノ」が開発されています。
メーカー各社さんのものづくりが進んでいることは、業界にとっては明るい材料です。
いかに普及させていけるか、大手さんが握っている契約書・仕様書の変更をいかに進められるかが大きな鍵です。
以上、「円安」と「最低賃金上昇」の2面から見てみました。
いろんなことを好き勝手に書かせて頂きました。
それは違う! というお叱りを受ける部分もありそうですが、何卒ご容赦ください。
ビルメンの仕事に誇りをもち、ビルメン業界の発展とビルメン業界で働く人々の幸せを切に願う立場として 書かせて頂きました。
ビルメン業界と業界で働く人々にとって、2016年が飛躍のきっかけになる年になるよう祈念いたします。
掃除のつぼは、今年の4月から4ヶ月の工事期間を頂き、8月にリニューアルオープンをさせて頂きました。
以前のサイトよりは、皆さまのお役に立てるサイトになったと感じておりますが、まだまだです。
来年は、もっと皆さまのお役にたてるサイトにしていきたいと思いますので、引き続きのご意見・ご支援・ご協力を賜れますよう、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
今年1年間、本当にありがとうございました!
心より感謝申し上げます!!
掃除のつぼ運営責任者 水谷 豊
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